Thank You
みなさん、「Thank You」という言葉を聞いて、どのような印象を持つでしょうか?
多くの人はポジティブな意味にとらえることでしょう。
多分幼稚園児や小学生でも意味と使い方を知っているであろうこの単語、多くの場面で使われていますよね。
ありがとう、という感謝の言葉や感情は、もしかしたら人間の原初的な感情の一つかもしれません。
しかし、スガシカオさんの「Thank You」は、その曲名とは裏腹に非常にヘヴィーです。
この曲は2003年に発売されたアルバム『SMILE』の一曲目。重々しいアコギのリフが雰囲気を醸していますが、驚くべきはその歌詞にあります。
ねぇ 明日 しんでしまおうかしら…
アルバムの一発目からこの歌詞。 普通のアーティストならまず使わないであろう、そして日常でもまず使われないフレーズ。そしてこの曲はこう続きます。
もどかしいこと全てのあてつけに
君の心ゆれますか?
ぼくのことで後悔してくれますか?
ねぇ それ以外のやり方で どうすれば神にすぐなれる?
どうしようもない遣る瀬無さと絶望感、でもこの世にまだ光を見出そうとしている、そんな姿が感じられます。
実はこの曲、いじめが原因で自殺してしまったという事件がモチーフになっているらしいのです。*1
歌詞が全体的に中性的なのは、もしかしたら自殺してしまった子の年齢が原因なのかもしれません。
またこの曲が収録されているSMILEも、スランプを脱却しようと 知人が所有する山奥の別荘にこもって製作したものであり、そこで体験した孤独感もこの曲に表れています。
許さない 許せないけど 君にいてほしいの…
本当は嫌いだし、一緒にいても楽しいと思うより嫌な思いをすることが多い。それなのに一緒にいたい、なぜか求めてしまう…そんな人が一人くらいはいますよね。
僕にもいます。ポルノグラフィティのCLUB UNDERWORLDに出てくる「嫌いな友」みたいなもんですかね。
個人的に好きなところは
海にうつった月の道 たどれば神に近づける
真っ暗な海の上に浮かぶ月と、自分と月を結ぶように海に浮かぶ月の光が脳裏に浮かぶようです。
スガシカオさんの魅力の一つは、こういったさりげない文章で強烈なイメージをリスナーに与える文学的な歌詞にあると思います。
「なんか嫌なこと多いなあ」「なんか、死んじゃおうかな…。」って思った人って、絶対いると思うんですよ。嫌な上司、好きじゃない仕事、うまくいかないプライベート…自殺というワードが身近なこの日本では、非常に頭に浮かびやすいと思うのです。
でも、そんなことは間違っても人に言えないし、ネットで呟くほど病んでもいない、ましてやそんなことを歌うアーティストなんていないし…そんな誰にでも持ってる、でも誰も言わない考えを綺麗なメロディで歌い上げるスガさんは本当にすごい。
スガシカオさんが好きな人や、ちょっと気になっているなって人は是非とも聴いてみてください。
ハマること間違いなしです。